立湧は、「たちわく」とか「たてわく」と読みます。水蒸気がゆらゆらと立ち上る様子を表した有職(ゆうそく)文様で、平安時代には貴族の装束に使われ、運気を上げる文様として愛されてきました。
有職文様とは、平安時代以後、公職に就いていた公家や女房などの装束や調度品に用いられた格の高い模様で、家柄・伝統・位階などによって使用できる模様が定められていました。
この立涌文様は、正倉院の宝物としておさめられている古裂(いわゆる「正倉院裂」)にもよく見られます。
立湧は古くから伝わる伝統文様ですが、デザインの観点からみるとアレンジがしやすく、向かい合った波状の線のふくらんだスペースには、他の様々な文様が入り、それによって呼び名が付けられています。菊が配された「菊立涌」、雲が配された「雲立涌」、波が配された「波立涌」などがあります。
伝統文様でありながらモダンな要素もある、とても魅力的な柄ですね。